音楽の宝庫、奄美大島から現われたニューカマーは、ヒューマン・ビートボックス&ギター&ボーカルのコウスケと、アコースティックギター&ボーカルのタツヒロというユニークな編成のデュオ"カサリンチュ"。ライブとプロモーションのために上京したメンバーに、ハート・ウオーミングな音楽の秘密について訊いてみた。
『フワッと気持ちよくなってほしい・・・』
音楽の宝庫、奄美大島から現われたニューカマーは、ヒューマン・ビートボックス&ギター&ボーカルのコウスケと、アコースティックギター&ボーカルのタツヒロというユニークな編成のデュオ。島で生まれ育った二人は高校時代にバンドを結成し、その後、それぞれに東京生活を経験。奄美に帰ってから再び出会って“カサリンチュ”をスタートさせた。音楽性は島唄ではなく、良質のポップだが、二人の生き方やテンポ感などに奄美の風土が色濃く反映されている点に独特の個性が宿る。メジャー・デビュー・ミニアルバム『感謝』は、インディーズ時代のリラックスしたムードをキープしながらも、よりスタンダードなポップを目指す意欲作。アコギをメインにしたグルーヴィーな「な」や、ちょっとフォーキーな「SUNNY DAYS」の他、ハナレグミのカバー「サヨナラCOLOR」など5曲が収められている。ライブとプロモーションのために上京したメンバーに、ハート・ウオーミングな音楽の秘密について訊いてみた。
タツヒロ: 島にそろそろ帰りたいなあ。コウスケ: うん、帰りたいね。
EMTG: いきなりですか(笑)。
タツヒロ: 一週間離れてると、帰りたくなりますね。
EMTG: 二人とも東京で暮らしたことがあるということですが?
コウスケ: 5年弱くらい東京にいたかなあ。学校に行くために東京へ来て、そこで出会った音楽好きの友達とレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが好きだったんでミクスチャーのバンドを組んで、学校を途中で辞めてバンドをやってた。ギターを弾いてました。最初は楽しかったんだけど、だんだん面白くなくなっていって。そのうち、東京にいる意味がほしくてバンドをやってることに気が付いた。あるきっかけで島に帰ったら、改めて島の良さを感じましたね。
タツヒロ: 僕は正確には東京ではなく横浜に住んでいて、新聞配達をやりながら専門学校に通ってた。新聞配達って朝が早いから、友達と遊べずに、家でひとりでアコースティック・ギターを弾いてることが多かったです。満員電車が嫌いだったから、配達終わって電車に乗って、朝6時前には学校に着いてましたね。とにかく人ゴミが嫌だった。目が回っちゃうんです。2年になって先生から進路を訊かれたので、「島に帰ります」って言って。東京の雰囲気は分かったので、もうそれで充分でした。
EMTG: じゃ、二人とも後輩から「東京に行きたい」って相談されたら、「行くな」って答えるのかな?
コウスケ: いや、「東京に行け」って言いますね(笑)。行かないと、島の良さが分からないと思うから。
タツヒロ: 僕もそう思います。行って良かったし(笑)。
EMTG: ミクスチャー・ロックが好きな人がヒューマン・ビートボックスをやるようになるって、すごく意外なんだけど?
コウスケ: 東京にいたときに、FUJIゼロックスのCMで“AFRA”のヒューマン・ビートボックスを聴いて衝撃を受けてCDを買ったんですよ。島に帰ってきて、実家の風呂やトイレや階段とかよく音が響くところで練習して、先に帰ってたタツヒロに「また一緒にやろうぜ」っていってアコギと合わせてみたら、「合うね」って。そこからタツヒロの影響でアコギを持って、曲も作るようになった。東京時代から考えると、信じられないですよ。だって東京にいた頃は「アコギ? だっせー!」って言ってたんだから(笑)。今もレイジがいちばん好きなんですけど、カサリンチュは自分にとって新鮮なことがやれて楽しいです。
タツヒロ: 高校のときのバンドでも1曲だけオリジナルをやってたんですけど、どうもテレくさくて他はカバーだった。カサリンチュでオリジナルを作ることになっても、やっぱりテレくさくない曲を作ろうって思ってますね。だから、自分の身の回りのことを歌詞にすることが多い。それでもラブソングはテレくさいです。今回の「感謝」も、周りの人に感謝するってテレくさいんですけど、ラブソングよりは自然に書けたかな。
コウスケ: テレくさいのも嫌だけど、ウソを歌うのはもっと嫌ですね。自分で「キレイゴト歌ってる」って思ったら、もう歌えない。「感謝」みたいに、自分の中から出てきた言葉だったらいいんですけど。
EMTG: カサリンチュとして、今、東京に来ていることをどう感じてるのかな?
コウスケ: なんとなく二人で始めて、集落のお祭りとか友達の結婚式に「お前たち、出らんな?」って言われて人前で歌い始めて、ようやく「音楽って楽しい」って思えるようになった。東京時代は音楽をやってても、こういうバンドになりたいだとか、“欲望”しかなかったですもん。で、つらかったし、音楽は厳しいっていうのを知ってたから、今回「カサリンチュでCD出さないか」って話をもらったときも、最初はネガティブにしか考えられなかったんですよ。でも今は意識がどんどん変わってきてる。島にいたら会えないような新しい人たちに出会えているし、特に島からメジャー・デビューできるって、島にいる若い人にとってはすごく大きいことだから、音楽に限らず彼らに何かしてあげたくてしょうがない。いい意味での欲求が、自分の中から出てきてますね。
タツヒロ: コウスケは「もっともっと」っていうタイプだからそれでいいし、僕は島にいて音楽をやれているので、変わらなくていい状態がありがたいです。東京には“病まない程度”に来れている。でも、そろそろ帰りたいです(笑)。
EMTG: わかってます、わかってます(笑)。まったく正反対の二人だなあ。
コウスケ: そうなんですよ。真逆の性格なんで、面白いです。たとえばライブで、どっちかが調子が悪くても、必ずどっちかが調子がいいんで、二人ともが落ちることはない。「助け合ってやっていこう」って話し合ってるわけじゃないんですけど(笑)。
EMTG: メジャーでやることになって、作る曲は変わったりしましたか?
タツヒロ: 僕の状態は変わらないけど、作るものは変わってきていると思います。インディーズの頃は、歌詞は島の暮らしのことだけだったけど、最近はより多くの人に伝えたいって思うようになってきてますね。
コウスケ: イベントとかでいろんな人に会って、いろんなものをもらってますから、申し訳ないんですけど、これからいい曲が作れそうな気がしてます。僕はプラス思考なんで(笑)。
EMTG: カサリンチュにとって、ライブってどんなものですか?
コウスケ: 当たり前のことなんですが、自分らが楽しくなって、お客さんも楽しいっていう。今、ライブがすごく新鮮で楽しい。
タツヒロ: 会場に自分の声が響いているのを感じることが楽しいですね。ただ、人がたくさんいるライブを見に行くのは苦手です。客席にいると人がたくさんいて、逃げ場がなくて目が回る。自分たちのライブは、いくら人がいても大丈夫なんですけど(笑)。
EMTG: 10月の「Setting Sun Sound Festival in AmamiVol.1」については?
タツヒロ: 毎年、島の人たちだけでやってるフェスと同じ会場なんで、不思議な感じですね。ここだと逃げ出す必要がないので、他のバンドも見れると思います(笑)。カサリンチュの曲を聴いて、フワッと気持ちよくなってほしいです。
コウスケ: 先輩ミュージシャンと一緒にやれるのが楽しみですね。自分が住んでる場所でやるので、いつも通り思い切りやれると思います。ワールドカップの南アフリカじゃないけど、“最初の1点”は自分らが取ります(笑)。みなさんに楽しんでもらえるように、自分たちができることをやります。ぜひ見に来てください。
【取材・文:平山雄一】
タツヒロの何処までも抜けていく優しいヴォーカル、コウスケの土の匂いのするアーシーなヴォーカルという、キャラクターの違う声で二人ともメインヴォーカルを取る。世界でも類を見ないユニークなスタイルで音楽を作り上げている。それがカサリンチュ。
高校の同級生だった二人。東京での生活を経て、島に帰郷。奄美大島で仕事をしながら音楽活動を続けているUターン・ユニット。友人の結婚式で2人で歌ったことをきっかけとして、ユニットを結成。「カサリンチュ=笠利の人という意味。」
2007年、奄美群島限定でミニ・アルバムをリリース。そのユニークなスタイルの音楽によって、1000枚を超えるセールスを録した。
- 24時間テレビ イベントin鹿児島 [HP]
- 8月29日(日)
[鹿児島]イオン鹿児島ショッピングセンター・風の広場
- jimamaワンマン公演「LIVE Nostalgia in OSAKA 〜南風のそよぐ日に」 [HP]
- 9月12日(日)
[大阪]心斎橋JANUS ※カサリンチュはオープニングアクト
- Setting Sun Sound Festival in AmamiVol.1 [HP]
- 10月10日(日)
[鹿児島]奄美市・大浜海浜公園野外ステージ
>>EMTGにて先行受付中(〜8/13(金)14:00マデ)<<